若手社員
プロジェクト
珍道中
Case.3 製造現場のスケジュールの“闇”を
ITの力で「見える化」する話
このブログを読むと、こんなことが分かる!
①中小製造業が抱えている問題とは?
②なぜ中小製造業にIT化が必要なのか?
③IT化する上での課題と、解決方法は?
ー主人公
Mさん
4年目新卒 経営企画室
こんにちは!新卒4年目のMです。
学生時代は環境工学を専攻していました。
新卒2年目でIT担当になり、ITツールの新規導入や
社内システムの保守などをやってました。
今回はじめて製造現場に入り込み、
本格的なツール開発に取り組むことになりました。
ー登場人物
検査チーム
社内で製作した製品を、検査するチームです。
製品は、だいたい針くらいのサイズですので、
顕微鏡を使って検査をします。
図面通りに製品が出来上がっているか、細かくチェック!
経営チーム
会社の意思決定機関、「経営チーム」です。
最近、検査チームの残業が気になってます…。
とりあえずMさんに調査を依頼した所、
想像以上の課題が見えてきました。
果たしてMさん、踏ん張れるのか?!
ー用語解説
【IT化】
アナログで行っていた業務・作業をデジタルツールに置き換えること。
製造現場では主に、生産性向上を目的として導入される。
ー 仕事量も、人の予定も見えない!
ある日、経営チームからMさんへこんな依頼が…。
検査チームの残業が多い気がします。
特にチームリーダーは、毎日最低でも3時間は
残業してますね...。
Mさん、ちょっと現地調査をお願いします。
経営チーム
は~い、ちょっと現場を見てきます。
Mさん
この時、両者はまだ事態の深刻さに気付いていなかったのであった…
数日後—————
検査チーム、何をしてるか全く見えない!?
Mさん
困りました!!何が起きていたかというと…
1.日々のスケジュール表はあるけど、
今誰が何をしているのか分からない状態でした。
2.リーダーは、やはり残業をしていました。
作業が後ろ倒しになっているのかと思いきや、
「スケジュールの作成」に3時間もかけていました!
3.メンバーも残業が多いです。
4.「この型式はこの人しかできない!」とスキルに
偏りがあり、結果一部の人に仕事が集中しています。
何ですって?!ということは、このような事が起きているようです。
1.検査チーム内で日々「誰が」「何を」しているのか
明確になっていない。
2.検査チームとしての正しいキャパ・スキルを
誰も把握できていない。
3.スケジュールの作成方法・作成ツールに
問題がある(?)
つまり、実態がわかってない、かつ最適なスケジュールを組むことが出来ていない!ということですね。
経営チーム
Mさん
でも予定通りに納品はできてますよね。
どうしてだろう??
もしかして、無理やり間に合わせているってコト??
ですかね?
もしかしたら…そのような状況になってしまっている
可能性大です。
経営チーム
恐怖!中小企業のあるある問題
ーーーーここで閑話休題
実はこのような問題は、中小製造業のほかの経営者と話をしていても
よく話題になることなんです。
中小製造業あるある
見えない
誰が今何してる?
進捗もスキルも
わからないよーー
気にしない
調整力は美徳!
間に合えばOK!
チャチャッと
やっちゃお!
見えにくい環境
人手・時間・お金
全部足りない…
改善まで
手が回らない…
悪影響
かたよる
スキル
教育が不十分なので、
特定の人ばかり
仕事が偏りがち…
教育が不十分なので、
特定の人ばかり
仕事が偏りがち…
ムリな予定
スケジュール通りに
仕事してるのに、
残業が多い!
スケジュール通りに
仕事してるのに、
残業が多い!
納期への圧
かさばる
出費
調整のドタバタで
無計画にモノを買う、
残業する
調整のドタバタで
無計画にモノを買う、
残業する
でも納期には
間に合わせなきゃ…
でも納期には
間に合わせなきゃ…
最終的に起きることは・・・
理由不明の
出費
根拠のない価格設定
コストを基にした、
適切な価格設定が
できない
コストを基にした、
適切な価格設定が
できない
本当に必要か?
誰も判断できないまま
お金はかかり続ける
本当に必要か?
誰も判断できないまま
お金はかかり続ける
伸びない
利益
コストが売上を殺す、
利益を生み出せない
コストが売上を殺す、
利益を生み出せない
会社経営としてダメダメでは…???
ーーーー本題に戻る
Mさん
えぇ~~!これが中小製造業の共通課題...。
だとしたらヤバすぎる…
うちの検査チームだけに限った話ではないんだな。
... これはどうにか解決しなきゃ!!
Mさん
でも、どこから手をつけたらいいんだろう。
現状、実際のスケジュールも仕事量も、見えない。
ムリとムダが「どこに・どのくらい」あるのかも
見えない…。
あれ、もしかして「見えない」ことが一番の問題なのか?
ー 利益を生み出す経営の第一歩!
「見える化」
経営チームと打ち合わせの結果、やはり「見えない」ことにより
様々な問題が発生していることが分かりました。
というわけで、検査チームの「見える化ツール」を、
ITを駆使して作成することになりました。
理想の【スケジュール作成・管理】の姿
リーダー以外も異常が見える!
代わりに
対応します!
簡単にスケジュールが
創れる!
オンラインで
いつでもどこでも、
短時間で作成!
精度の高いスケジュールが
創れる!
基準・スキルが正しく反映されると、
予定通り進むぞ!
リーダーの手が空く!
教育・管理・改善に
専念できる!
効率UPで、残業が減る!
定時で
帰れる!
IT(デジタルツール)を駆使する事で、これが実現
できそうです!紙で見える化するのは大変ですからね....
Mさん
目標も立てたことだし、早速開発に取り掛かろう!
Mさん
スケジュールの作成手順、想像の3倍も複雑!?
Mさん
あとは、「スケジュール作成手順」を
検査チームリーダーに教えてもらって、
ITツールに落とし込むだけだな!
こりゃ思ったより、簡単そうだ!
検査チームのリーダーさん、スケジュールの立て方、
教えてくださ~い!
Mさん
おつかれさま~
スケジュールの立て方を説明しますね。
検査チーム
検査スケジュールの立て方
①
社内システムに登録された
検査予定を確認
今後の検査の予定が
全て登録されている
社内システム
②
翌日にやる予定を選ぶ
(1日平均30件)
全ての予定から、
明日やる分を選ぼう
③
予定をメンバーに
振り分ける
これは〇〇さん、
こっちは□□さん
簡単じゃん!と思いきや...
判断の基準が多い!!複雑!!!
経験や、口頭伝達の情報も!?
Mさん
判断基準が多すぎませんか…?
社内システムの情報以外に、経験や口頭の情報も
考慮に入れてスケジュールをつくっているなんて...
それだけじゃなく、お客様からの
「今日出荷してほしい!」という要望に応えるために、
当日にスケジュールを変更するときもあります。
検査チーム
急に予定が入るなら、スケジュールを作るのが
ますます難しくなるじゃないですか!
それって、無くせないんですか??
Mさん
うーーん。
一見無茶な要望でも、お客様が必要としてるなら、
出来るだけ応えたいからね。
それが、うちの強みでもあると思うし。
検査チーム
なるほど、そうなのか。。
うちのような中小企業の場合、
大手企業にない「納期の調整力」が強みになるのか!
Mさん
Mさん
でも、このままITツールに落とし込むのは難しそうだな。
どうしよう…。
この強みを生かしたまま、簡単にスケジュールを
作れるツールはあるのかな?
ツールを探そう!ところが...
何社かに直接問い合わせたり、展示会に何度も足を運び、
ツールを探してみましたが、現場で使えそうなツールが見つからない。。。
困った!!
この複雑なスケジュール作成手順を
既存のツールに落とし込むことは出来ないんじゃないか?
Mさん
やはり、そうでしたか...想定していた通りです。
経営チーム
Mさん
えっ!?なんでですか?
既存のITツールに落とし込めない理由
「納期の調整力」、それは中小製造業が持っている強みです。
しかし、これを活かしてスケジュールを作成するためには、
一般的なシステム構築の考え方が通用しないのです。
一般的には、大元となる情報を集約(データベース化)し、
システムでスケジュールを作成します。
そのスケジュール通りに、装置・人が動きます。
しかし「調整力」を活かそうとすると、
日々変わる状況をもとにスケジュールを作成・変更する必要があり、
それを実現するツールは、なかなかありません。
既存のITツールの中に「人の判断による調整」を加える機能が無い場合、自社内で開発することも必要になります。
経営チーム
Mさん
なるほど...これはツールを開発するしかないですね!!
でも、このあまりに複雑な手順を、
どうやって落とし込めばいいんでしょうか........
そもそも、現状の作成手順が本当に最適なんですか?
今の手順をそのまま再現することが、
最適なツールを作ることにはなりません。
「スケジュールが見える」という目的を達成するため
「理想の作成手順」から考えるべきです。
経営チーム
確かに!分かりました。
では「理想の作成手順」をもとに、
「スケジュール作成ツール」を開発していきます!
Mさん
自社でのツール開発!一歩一歩、進みます
気持ちを切り替え、以下のように開発を進めていきました。
※このサイクルを、何度も繰り返す
簡単なようで、現実はなかなかスムーズにいきません。
検査チーム 「これじゃ使えないよー!」
検査リーダー「もっとこんな機能が欲しいよー!」
現場の要望に応えながら、検査チームとの打ち合わせや
経営チームとのコミュニケーションをとり続けました。
外部のIT会社の力も借りながら、
ひとつひとつ、問題点の修正を行い....
そしてついに!
現場で使えるツールを開発することができました...!
(パチパチパチパチ)
ツール開発秘話はここでは割愛します…。
気になる方は、是非会社見学にお越しください!
私から直接お伝えします!!
Mさん
ー やはりIT化は効果的だった!!
新たに「見える化ツール」を現場に導入した結果、
早速効果が現れてきました!
めちゃめちゃ楽になったよー!ありがとう!!
検査チーム
効果
この効果によって、やっと私の時間を空けることが
出来たんだ!
これで、メンバーに新しいスキルを教えたり、
改善活動に時間を使えるよ!
検査チーム
素晴らしいですね!
経営チームにもスケジュールが
見えるようになりました。早速見てみましょう。
どれどれ....おや?
メンバーのスキルに偏りがあるようです。
→教育不足がみえてきました!
また、合計時間のつじつまが合いませんね…。
今までスケジュールに載らずに
隠れていた作業があるようです。
→誰かが黙ってやってくれていた
仕事があるということです!
無理をさせてしまっていたんですね。
経営チーム
げげげ!新しい問題が出てきた!
Mさん
いえ、これは成果ですよ!
今までは現状も問題も、見えてすらいませんでした。
検査チームを「見える化」することで、
やっと問題が見えるようになりました。
今後は、出てきた問題を
1つずつ解決していきましょう!
経営チーム
なるほど!「見える化」って大事なんだなあ。
Mさん
検査チームで上がった成果を、他チームにも展開して
IT化を進めていきましょうね ♪
経営チーム
ー今回のプロジェクトを振り返ってー
1. 中小製造業にとって「見える化」は有効!
会社が利益を生み出すためには、
売り上げを上げることと同時に、ムリとムダをなくすことが必要です。
しかし!
中小製造業ではこのムリ・ムダをなくすことが難しい場合があります。
なぜなら、多くの会社はこのような状況だからです。
①現場にムリ・ムダが発生しやすい
・標準化しづらい、自動化しづらい工程が多い
・属人的な作業になりがち
②現場のムリ・ムダが見えづらい
・社員ひとりひとりが高い技術力、対応力をもつため、
作業のムリ・ムダを社員が吸収してしまう
→どこで、どのように発生するか分からない
こうした状況に対して、「見える化」は非常に有効です。
工程を明確にし、現状を確認できるようになると、
これまで見えなかったムリ・ムダを「異常」として見える化できます。
見えるようになったら、後はなくすだけです。
Mさん
2. やみくもなIT化は逆効果!?
さあ!早速「見える化」しよう!
となったとき、ITツールはとても便利な道具になってくれます。
そんな中で「当社もIT化しなければ!!」
と考える企業は非常に多いのではないかと思います。
しかし、やみくもにITツールを自社に導入するだけではダメです。
効果の無い、無駄な仕事を増やしてしまいます。
あくまでITは「手段」です。
以下の点を考える必要があります。
経営チーム
3. 会社の強みを活かしたIT化をしよう!
加えて、中小製造業においては、
「会社の強み」を活かしつつ、どうIT化を実現するか?が超重要です!
というのも、今回のツール開発の中で
弊社が「すごいことをしていた...!!」と気づいたのです!
なにがすごかったのか?それは
「お客様の希望を最大限叶えよう!!」としていたことでした。
そして、この凄さを実現できているのはなぜかと言うと、
検査チームのメンバーが超優秀だったからです!(まさに少数精鋭!)
(ありがとうございます)
優秀な現場を持ち、細かい対応ができる調整力は
大手にはマネできない中小製造業の強みです。
この強みを活かせないIT化は、もったいない!
導入する現場の特徴や、作業フローを考慮して、
どんな情報が見えたらいいのか?どんな画面だと使いやすいのか?を
一つ一つ考えていく必要があります。
「既存のツール」ではなく、ツール開発が必要になる場合もあり、手間がかかりますが、
その労力に見合った効果が得られるはずです!
Mさん
最後に。。。今後の展望は?
最終的には、会社全体について
「製造現場を効率よく、働きやすくする仕組み」を
作っていきたいです!
Mさん
具体的には、
・製造現場、全チームのスケジュールをAIが自動作成
・進捗状況や、完成した製品の品質を自動で登録、
いつでも・どこでも確認できる
・材料や消耗品などを、自動発注ができる...etc.
よりよい製造現場にするため、やることは山積み...!
一つ一つ挑戦していき、形にしていきます!
Mさん
続
カイゼンは続くよどこまでも